濡羽色
小学生のころ、
聖徳太子の「冠位十二階」を調べていたことがあります。
色で位を分ける制度なのに、
どう数えても十二色もない。
なぜだろう。
なぜだろう。
あまりに私が不思議がるので、
母が言いました。
「出版社に手紙を書いてみたら?」
子どもの拙い文章でしたが、
ほどなくして返事が届きました。
万年筆で丁寧に書かれた、
何枚もの手紙でした。
その手紙の中で知りました。
同じ紫でも
杜若、葡萄――
色にはいろいろな名前があるのだと。
今日、散策の途中で
手水鉢の龍の隣にカラスが止まりました。
おもむろに水浴びを始めます。
水を含んだ羽が
つやりと光る。
そのとき、
濡羽色
という言葉が
ふっと浮かびました。
言葉でしか知らなかった色を、
はじめて目で見た気がしました。
子どものころ届いた
あの万年筆の手紙のことを、
ふと思い出しました。