むかし、怖い漫画に心酔していたころ、夜の百貨店で起こる奇譚を描いた話があった。
昼間に目にする華やかな光景とはちがう、夜の百貨店。
当たり前のことなのに、それを意識すると急に気になりはじめる。
百貨店の催事場の移り変わりは見事なものだと思う。
なかでも、12月25日から26日への様変わりには毎年舌を巻く。
あれほど華やいでいたクリスマスの空気が、翌日にはなかったかのように片づき、一気に年末年始が押し寄せてくる。
芝居でいえば幕替えどころではない。まるでミュージカルから古典芸能へ、一夜にして舞台が入れ替わるような鮮やかさである。
そんなことを、この時期になると思い出す。
前置きが長くなったが、あんきゅう塾では3月いっぱい、入試を終えた受験生たちのために教室を開放している。
高校からの宿題を持ってくる子もいれば、少し顔を見せに来る子もいる。
春休みに入っても、教室にはまだ今年度の余韻が残っていて、そこに新しい学年の空気も少しずつ混ざりはじめる。
見慣れた顔ぶれと、新しい顔ぶれとがすれ違うこの時期ならではの時間である。
3月31日で、今年度の舞台はいったん幕を下ろす。
そして4月1日からは、また次の舞台が始まる。
あと残りわずか。
最後の日には、心の中でひとり静かにスタンディングオベーションを送りながら、今年の受験生たちを見送りたいと思っている。